1. はじめに
1.1 本書の目的
この本は、Symbol ブロックチェーンの仕組みと、SDK(ソフトウェア開発キット)の使い方をやさしく解説する入門書です。 ブロックチェーンはむずかしそうに感じるかもしれませんが、基本をおさえればアプリやサービスに活かせます。 この本では、アカウントの作成やトランザクションの送信、モザイク(トークン)の管理、マルチシグなどの機能まで順番に説明します。
1.2 Symbol とは
Symbol は、ブロックチェーン技術を使った分散型ネットワークのプラットフォームです。 スマートコントラクト用の仮想マシン(EVM)はありませんが、シンプルな設計で高速・安定した取引ができます。 ブロックチェーンは中央の管理者がいなくても、ネットワーク全体で取引やデータの正しさを保証します。 Symbol はこの仕組みで、安全で柔軟に価値や情報をやり取りできる環境を提供します。
Symbol の特徴は次のとおりです:
- 安全性
すべての取引は暗号技術で守られ、改ざんはほぼ不可能です。公開鍵と秘密鍵の仕組みで、自分の資産を自分だけが管理できます。 - 柔軟性
トークン(モザイク)を自由に発行したり、アカウントに制限やメタデータを付けたりできます。自分専用のトークンや、条件付きの資産も作れます。 - 高度な機能
複数のトランザクションをまとめる「アグリゲートトランザクション」、複数人の承認が必要な「マルチシグアカウント」、 条件付きで資産をロックできる「シークレットロック」なども使えます。 - 高速なブロック生成
ネットワークでは約 30 秒ごとに 1 ブロックが作られます。1 ブロックには最大約 6,000 件のトランザクションが入り、多くの取引を効率よく処理できます。 - 拡張性
外部アプリケーションから REST API や WebSocket を利用して接続可能です。
Symbol は、単なる暗号通貨ではなく、自分のサービスやアプリの基盤として使えるプラットフォームです。 この本で Symbol の仕組みと SDK の使い方を学び、安全で柔軟なブロックチェーンアプリを作る力を身につけましょう。
1.3 SDK の役割と特徴
SDK は、プログラムで Symbol を操作するための便利な道具です。 SDK を使えば、むずかしい暗号化やトランザクションの作成も簡単にできます。たとえば、次のことができます:
- アカウントやモザイクの作成
- トランザクションの生成と署名
- アグリゲートトランザクションやマルチシグ操作
なお、今の SDK v3 には REST API や WebSocket でネットワークを監視する機能はありません。 トランザクションの確認やネットワークの監視をしたいときは、SDK とは別に REST API や WebSocket を使ってください。
この本では TypeScript だけでなく、Python や Java など他の言語でも同じ考え方が学べるように説明します。
1.4 本書の対象読者
この本は、次のような方に向けています:
- ブロックチェーンの基本を学びたい人
- Symbol でアプリを作りたい人
- SDK で簡単にブロックチェーンを操作したい人
プログラミング初心者でも分かるように、概念の説明をやさしく行い、実際の操作例は後の章でコード付きで解説します。